2005/03/20

JAPAN CIRCUIT Vol.22

出演は bonobos、Salyu、ハナレグミ、そしてマボロシ。
以下ライブレポ。長いです。

900番台だというのに思ったより前の方、ステージ向かって左側ゲット。
左のスピーカーに程近いので音が偏って聴こえるであろうと予測しつつ
開演前に流れっぱなしになってるSEをひたすら聴く。

『MAGICLOVE』のイントロが流れた瞬間に「あっ!」と声を出して
怪しまれる。その直後サビに入った時に同じく声を上げた人がいて
なんとなく仲間意識。
そして『MAGICLOVE』によりなんとなく切ない気持ちになる。

��キノンの兵庫さんが登場、本日の出演順発表。そして開演。

トップバッターは大阪からやってきたbonobos。
ラテン系でいいのかな。ゆったりめのBPMで明るい音。
左のスピーカー側にいるからか、少しベースが目立つ。
Voの蔡の飄々としたトークに笑いつつ、気持ちよく身体を揺らす。
トップだったことと、やはり東京でのライブ本数が絶対的に少ないこと
のせいだろうか。
どうしても『アウェー』の想いが強かったようで、若干固さが見えた。
次に東京来る時はもっと力抜いてよりbonobosらしいステージが観たい。

次はSalyuちゃん。
大きな紅い花を頭につけて、白いふわふわのワンピース。
それだけでもう可愛い(←だいすき
登場時はにこにことステージの右で左でぺこんとおじぎしたりして
ほんわかムードが漂っていたのに、彼女が一声あげた瞬間に
空気が変わった。
会場の客が飲まれた瞬間だったと思う。
Salyuの声は他の誰とも違う。
その声は、大気を震わせる。空間を包み込む。
彼女の声はその場の空気そのものになる。
歌が終わったあとの彼女はどこにでもいる普通の女の子で、
にこにこと笑って少し話をする。
次の曲を間違えたときの照れ笑いなんて、本当に普通なのに
歌声を発した瞬間に彼女はとても透徹した存在となって
その声がこの空間の空気そのものになっていく。
凄い、としかいいようがない。
ちなみにサポメンには小林武史さんから北田マキさんまで
笑っちゃうくらいに豪華でした。

そして、ハナレグミ。
箱ティッシュを持って『花粉が凄い』と言いながら登場。
ゆるい、ゆるすぎる。
オールスタンディングのライブハウスという、明らかに
弾き語り宅録という現在の自分のフィールド外のところにいるのに
登場して座っただけであっというまにAXを自分の空間にしてしまった。
一曲目は『ハンキーパンキー』
この曲で完全にマボロシファンごとハナレグミを聴かせる空間に
持っていったと思う。
そしてくるりの名曲『男の子女の子』
小さなネタで笑わせても、すぐに自分の方に引き戻してしまうその引力。
曲の合間のトークもゆるゆるで、今日はマボロシで踊って行ってねなんて
ブレーメンの一節唄ってしまうほど。
『ボクモードキミモード』をほんとは踊る曲なんだよと言って
ゆるゆるの弾き語りアレンジにしてるくせに客を躍らせる。
同じく箱ティッシュ持参の今野英明さん(ロッキングタイム)を招いて
��曲(多分『ありふれた言葉』ともう一曲)やったあとに
ラストは『さよならCOLOR』
これは反則だろう。ここまでサービスしちゃっていいのかと思う。
バタ犬の名曲のセルフカバー。
案の定泣かせていただいた。あざとくて悔しいが
退場時までやっぱりゆるゆるだったのでもうこの空間自体が
彼に支配されていたんだと思い知る。脱帽。

客が前に押しかけて大変なことになりつつもステージの転換は進む。
人のスキマスキマに入らされてなんて隙間産業(誤用)などと
困り果てつつもステージに彼等が現れた。


マボロシのライブはこれで3度目。
アルバム一枚だけってくらい持ち玉少ないんだから
セットリストなんて毎回似たようなものだろうと予想はつく。
…にも関わらず毎回毎回こんだけわくわくしてしまうのは
坂間さんとタケさんの技量だ。
今回のライブもなんかある。絶対になんかある。
セットリストが同じだろーがなんだろーが
その瞬間にその場にいないと得ることができないものを
毎回必ず持って来るのが彼らだと思う。


マボロシバンドのメンバー登場後、満を辞してタケさん登場。
『泥棒』のイントロが流れて坂間さん登場。
マイクスタンドはもう使わないと決めたのだろうか(笑
この時点で早くも客席は沸点。
「泥棒!」を皆でコールしまくって、『THEワルダクミ』突入。
この2曲だけでタケさんのリフのかっこよさに満腹気分。
��曲しかやってないのに一気に観客はあがってる。
あとはもうマボロシのライブを全力で楽しむしかなくなる。
ハナレグミのゆるい空気は完全に払拭され、
この空間を彼等が完全に掌握している。
そして次の曲は個人的に『マボロシサウンドの真骨頂』だと思っている
『マボロシのほし』
モータウンサウンドと呼ばれるような音に坂間さんらしいラップが乗る。
ギターとラップが両方唄うサウンドがマボロシの目指してる
サウンドだとインタビューで二人が言っていたが
この曲は今のマボロシの到達点だと思う。
それだけ完成されたこの曲はライブでもやっぱり映える。
平和を唄っているはずなのにこの歌は紛れもないラブソングで
拳突き上げながら、タオル振り回しながら、サビを一緒に唄いながら
ささやかな、普通の人の普通の願いが胸に響く。
ギターのサウンドも相変わらず開放的なのに、歪みのあまり少ないその音が
なんとなく泣いてるようにも聴こえて、まさに『ギターが唄っている』
たった3曲でこの音色の幅。タケさんを改めて凄いと思う間もなく
ドラムが、MPCが、ビートを刻んで坂間さんが煽る。
「おい。すげーキテんぞ」「マジで半端ない!」
観客はその煽りに喜んでついていく。
「いや、来てるのは一人なんだけど」
と、笑いを交えて
「おい。ゲストキテんぞ。」
と言い直して登場したのは御馴染みKREVA。
今までマボロシがやったライブ9回のうち、8回に登場。
最早メンバーですよと突っ込みを入れつつ
『ファンキーグラマラスPart1』
相変わらず互いを刺激しあって高みに持っていくような掛け合い。
KREVAの『音色』を一節だけ歌って大サービス。
このときのギターアレンジが最高だと思った。
『音色』タケさんリミックス聴いてみたい。
そしてその流れでセッションしようという話になって即興。
クリスタルケイとの曲である『Baby Cop』を坂間さん、
KREVAは…すみませんわかりませんでした(土下座
そしてそして、『廻し蹴り』、『ファンキーグラマラスPart2』
モッシュも凄くてアゲアゲの空気を断ち切ってKREVA退場。
KREVAの登場に盛り上がりまくった客を、KREVAの退場でも下げさせない。
クールダウンと引き、は違うんだよと身を持って教えてくれる。
「福岡スペシャルだったんだよー」と言いながら
『ネタになってウタになってNOW ON SALE』
アレンジが施されていて、薄暗い小さなバーでおっさんが歌うような
渋めブルースサウンドから、かなり突き抜けて明るい音になってる。
それでもブルースの要素が全く消えてないのがタケさんの引き出しの多さ。
幻の3番の歌詞は聞き取りきれなかったが、30代とカンチューハイで
韻を踏む辺り、まったくもって『らしい』。
ラストは『SLOW DOWN!』
JAPAN CIRCUITオーラスを飾るにふさわしく、観客もメンバーも
残ってるエネルギーを爆発させるかのように盛り上がる。
途中に挟んだメンバー紹介は今までのライブより若干長めだったが
そんなものはブレイクにもならず、観客の熱は上がりっぱなしだった。
そして完全燃焼、大団円、と思いきや観客席から沸くアンコール。
「持ち歌ないんだよ!」と言いながらもう一度登場してやってくれたのは
『HARDCORE HIPHOP STAR』
この曲ほどラストにふさわしい曲はないなあ、と今日改めて思った。
爆発的な攻撃力があるわけでも、際立ってトリッキーな何かが
あるわけでもない。
ただ、この曲がAX中に霧散してた観客の熱を、ステージに収束させ、
そして改めてマボロシのライブに観客を取り込んだ。
派手な曲で盛り上がって観客が飛び跳ねたからって
ライブは成功じゃない。
その空間を自分達のものにするかどうかだと思う。

マボロシはそれを当然とばかりにやってのけた。
まんまHIPHOPからモータウンサウンドまで、
とっ散らかって振り幅でかすぎの音楽を
『マボロシの音楽』だと堂々と放って、空間を自分達のものにした。
掌握する力が彼らにあった。全てを飲み込むほどの引力があった。


今回のライブはSalyuにもその片鱗が見えたし、
ハナレグミも堂々としたものだった。圧巻だった。
思えば凄いメンツだったなあと感動することしきり。
そしてはじめは真ん中より少し前にいたはずが
押されて突き飛ばされてスキマスキマの隙間産業で最後の最後で
��列目という凄い場所にいた自分に乾杯。