2005/05/29

ゴスペラーズ沖縄ライブのレポ

『その先が見たい』なんて奇麗事を私は武道館ライブの後に書いた。
枠が決まってて、そこをきちんと満たすライブじゃ物足りなかったから。

武道館ライブを観るまでの数ヶ月、私が観たライブは思えば総じてとんでもないライブだった。
BLOCKSでのライムスター、マボロシ、HMVでマボロシ。
JAPANCIRCUITでマボロシ、ハナレグミ。スカパラワンマン、及川光博。
マボロシ×3は観すぎかもしれないけど(笑
とにかくどれもこれもすんげーライブだった。
『LIVE』なのだ。その瞬間その場に居合わせないと得られないものがそこに存在してた。
だからこそ、高レベルだけどどこか予定調和なゴスペラーズのライブが
物足りなくなってしまったんだと思う。
まあ、ジャンルが違うとかそういうのも考慮すべきなんだろうけど
ハナレグミなんてギター一本弾き語りだったし、
ゴスペラーズが不利な条件はなんもないと思う。比較するとしたらね。


沖縄、凄く楽しみだった。
ゴスペラーズ好きだから、凄く楽しみだった。
予定調和のライブは物足りないと思う一方で
物足りないと思えるほどレベルの高いライブをしているのは事実だから。
だから、普通に楽しいライブなんだよ。誰もが楽しいと思うライブなんだよ。
そして沖縄1日目。
思ったとおり、思った以上にいいライブだった。
客がゴスペラーズを大好きで、ゴスペラーズはライブが大好きで。
ほんとにあったかいライブだった。
正直、これで十分だと思ったくらいだった。
それこそ千秋楽行けなくてもってくらい楽しかった。
で、千秋楽。一番最後の最後のライブ。


村上てっちゃんのあの呆然とした顔を1ヶ月以上たった今でも忘れられない。


『カレンダー』→『ウルフ』の流れの時だった。
観客の歌声に圧倒されて一瞬呆然としたんだな。
そしてそのあとの参ったような死ぬほど嬉しそうな笑顔。
あの日、会場にいた客は本当にゴスペラーズが好きで、ライブが楽しくて物凄く純粋で凶暴だった。
あんな大きな歌声を聴いたことがない。
イントロが流れるたびにうわあって、飛び跳ねて喜んで。
そして私はその後のことをあまり覚えていない。

客がゴスペラーズの持つ『枠』を壊した瞬間が『ウルフ』だった。
千秋楽という事もあってメンバーは最初から結構飛ばしてたけれど
多分、メンバーも予想外に引っ張られていったと思う。
ペースを狂わされるのはプロとしては失格かもしれないけれど
彼等は客に引っ張られて物凄いライブをやってのけたんじゃないだろうか。
あの会場との一体感と熱は、自分が今まで行ったライブの中でも1番か2番だと思う。
��ちなみに今でも本当に凄かったと覚えているのは6年前、1999年の
B'zのツアーファイナル@横浜国際@大雨のBrotherhoodとCalling)

客を引っ張る、巻き込む、飲み込むライブはここ最近よく観てた。
ハナレグミ、salyu、ライムス、マボロシ、スカパラ。
だけど、客と一緒に上に上がるライブってのはなかった。
それはプロとしてはどうなのって話かもしれない。
客も計算のうちに入れるべきなのかもしれない。
だけど、それじゃ物足りないところまでゴスペラーズはきてた。
沖縄のライブはひとつの答えであり、結果であったと思う。
ああいう瞬間に居合わせたいから私はライブに行くんだと再認識した。
奇蹟みたいな夜だった。

2005/05/16

やさしいライオン

中村一義改め100S。

私の中で中村一義は『金字塔』で止まってる(=その後の作品聴いてない)
わけだが、バンドになったってので100Sの『OZ』を聴いてみた。
ちなみに、私が『金字塔』聴いたのは発売当時だったので
幼かった私には彼の世界は難解すぎた。

『金字塔』の印象ががらがら崩れた。恐ろしくよかった。
これはほんとにこのメンバーだからこそのケミストリーだなあと。

中村一義ってのは、自分の中で確固たる理想の世界ってのがあって
それを一人で、誰も介在させずに築いているというイメージがあって。
だから、彼がバンドを組むってことが物凄く意外だったんだけど
組んだら組んだでワンマンバンドかなあと思って聴いた。
そしたら、本当に『バンド』でまずそれに面食らった。
明らかに池ちゃん(池田@バタ犬@アフロ)の影響受けてる曲とかあるし
メンバーが誰一人埋もれてないし、
中村一義が突出しきってるわけでもない。

構成が複雑怪奇だったり歌詞が聞き取れない声だったり
私が知ってる中村君らしさは相変わらずだとも思ったけど、
彼は彼だけの世界を作るのをやめて、
彼を理解してくれる人たちを理解して、皆で世界を創るようになったとそんな風に思った。
何があったのかは知るよしも無いが、彼に新しい風が吹いて
そしてそれは凄くよい変化だったのではないかと。


んで、一番好きなのがこのエントリのタイトルの『やさしいライオン』。
泣けて泣けてしょうがない。
キャラが違うけど、これはもうどうしようもなく泣けるのだ。

「もういないあなたを明日へと送るから。」
「逢いたいならば夜空またいで、逢う場所はもう、ここではない。」
「あなたは、ただ、心に居て」
「逢いたいならば声嗄らして、あった事、唄えばいい」

『逢いたい』と言える強さと『逢えない』ことを受け入れるやさしさ。
相反した切なさがたまらない。
この人の世界はこんなに優しくて深くて痛かったのかと。

最初の方に書いたとおり、彼は自分の理想の世界を構築する事が全てで
それはすなわち彼は彼の世界に独り閉じこもろうとしてるんだと。
そういうイメージがあったんだけど、このアルバムはもっと大きな世界を唄ってて、それは死とか絶望とか
そういうものが全てにおいてついてまわってるような曲が
とても多いんだけど、その世界にも光を見つける術を彼が知ったような、そんな風に思った。
切ない曲ばかりだけど、それはどれも決して悲観でも諦観でもなく
ただ、あるものを受け入れる強さと潔さ。
それから、優しさと生命力、というか熱を感じた。