2006/02/01

POMERANIANS 「レインボークライマー」

一言で言えば、物凄くポップでクオリティの高いアルバムだ。

音色の幅広さ、リズム隊がもたらす音の厚み、気持ちいいグルーヴ。

荒削りな部分もあるけれど、『今』、彼らが持っているもの全てを出し切った作品だと思う。


そこがポイント。


『今の全てを出し切った』このアルバムは、酷く純粋で、凶暴なまでの想いが詰まってる。

「衝動」と呼ぶに相応しいモノが。



「音楽が好き」で音楽をやってるバンドは沢山いるし、私はそういうバンドが鳴らす音楽が好きだ。

それはポメラニアンズだって同じで、彼等のライブを観れば

彼らが音楽が好きで好きで、それでそこに立ってるってことが良くわかる。

だけど、このアルバムでは彼らはそれに留まらなかった。


「音楽が好き」で音楽をやっているバンドの音楽には、本人の愛情が山ほど詰まっている。

そして、その愛情のベクトルが自分達が奏でる音だけに向かっているバンドというのは

実は決して少なくなかったりする。

創作活動なんて所詮自己満足であるといってしまえばそれまでなんだけど

やっぱり「自分がやりたいからやる」で完結してしまってる、それ以上が見えない人も多い。

(その反対が「売るために売れるモノを作る」セルアウトだとは言ってない。それは極論っつーもんだ)

しかしこのアルバムを作るに当たって彼等のベクトルは完全にCDの中ではなく

その先の、CDを取った「手」を指していた。つまり、聴き手に向かってた。


こんなにも『伝えたい』衝動の詰まった音は聴いたことがない。

歪まずに届いて欲しいからこそ自分達の全てを詰め込んだアルバムなのだ。

それをやってのけた彼らは物凄く潔くて、強い。



自分が好きなだけじゃ足りない。それが伝わらないと意味がない。

それは、音楽をビジネスにもしなければならない彼等の覚悟だ。

ただ「届け」という想い。

それがこのアルバムの音に厚みを出している。

衝動だけでは決して作らなかった、作れなかった作品なんだ。

ドラムのフィルインひとつにしてもちゃんと練られてる。

ベースラインが上に乗ってる音色に絡むように、ベースだけでもイイ音楽に聴こえるように

アレンジは精巧であり、自分達の勢いを損なわない絶妙なバランスを保ってる。

作りこむ部分と、インスピレーションを大事にする部分。

このギリギリのバランスがたまらなくいい。

そして、全てはリスナーに届くように。それだけをただひとつ目指して作られている。

だからひとつの作品として全くぶれていない。

バラードも、明るくてポップな曲も、芯は太くてまっすぐで根っこでちゃんと繋がってる。

飛ばさずに1枚丸ごと聴ける作品に仕上がっている。



去年の夏、J-WAVEのイベントで初めてPOMERANIANSを見た。

その時のVo.ザッキーの言葉を、声をいまもはっきり思い出せる。

その時現在シングルとしても発売されている「カワタレボシ」を初披露したんだったかな。そのMC。


「今の僕らを唄ったような曲です。夜明けって。」



『僕らの想いはきっと 右へ左へと流されても 姿を変えてずっと 伝うから伝うから』



伝えたいと願わなきゃ届くはずもない。

彼等の凶暴なまでの欲求を詰め込んだこのアルバムが、ちゃんと沢山の人に届けばいいと思う。

そして、私はこのアルバムを沢山の人に聴いて欲しいと思う。

このエントリがそのきっかけになればそんな嬉しいことはない。

彼らのよさを伝えたくて、このエントリを書いているから。



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