2005/12/09

Jackson vibe@LIQUID ROOM

彼等が持つ疾走感というものは、どの楽曲にも共通しているもので、
そしてそれは総じてとても気持ちいいものである。
それは、楽曲が持つポジティブさに他ならない。
彼等が走っているのは、前を向いてるからであり
決して何かから逃げてるわけでも、走らされてるわけでもないのである。
だからこそJackson vibeというバンドには、リスナーを元気にさせる力があるのだ。
Jackson vibeはこの世界に絶望していない。
だから希望を歌える。未来を歌える。
だから、Jackson vibeのライブに行った人の多くが笑顔で帰り、「元気でた」なんて
感想を持つことができる。
彼らのライブで感じることができるのは、生命力。
同じ世界に生きているのだ。
距離はあれども、彼等が立っているのは、私たちがいるこの世界に他ならない。
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ライブ開始初っ端から『シャラララ』、『ワンダ』、『風』の3連発。
ここ最近のイベントで、ライブ後半のクライマックスという位置づけがなされていた
このラインを1発目に持ってくることで、会場は一気にヒートアップした。
音の根っこを担うリズム隊のグルーヴの太さ。
この厚みを少しも損なわずに乗る丁寧なギターと、圧倒的な存在感を持つ声。
会場の空気は一瞬で変わる。大きなエネルギーがうねる。空気が震えている。
いきなりこんなんで大丈夫なの?なんて思いは、すぐに払拭されることになる。
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サポートの窪田くんが出てきて、『夜と風と』
そして最近のライブではやっていなかった『言わずとも』。
ファンに人気の高いこの曲はCD通りの疾走感に、CD以上の音の厚みを持って観客に届く。
滑ってるんじゃない、ミスじゃない。
だけど、こんなスピード感あるライブは初めてだと思った。
途切れない。一瞬でさえも気を抜かないJackson vibeと真正面に対峙しているファンの
誰もがただ、ステージに釘付けになっていた。
バラードのはずの『セピア』でさえ、クールダウンにならない。
この曲の持つ激しさが、会場を包む。
太くメロディアスなベースラインが胸の奥を震わせる。
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こんなに激しくて息もつかせてくれないようなライブなのに、Jackson vibeも、客も。
笑顔が途切れない。
少しトリッキーなリズムを持つ『外は雨』に『カミサマオネガイ』。
楽しげに腕を振り、体を揺らす。
さっきまでの熱を開放させるように、溜まっていたものが空へ昇っていくような感覚。
スタンダードなリズムの曲の合間にこういう曲をやると、ドラムの上手さがよくわかる。
須川さんのドラムは激しいけれど、乱暴じゃない。
それはLoop The Loopを聴けばよくわかるはずだ。
激しさを、熱をひたむきにぶつけるバンドから数年が経ち、
Jackson vibeになった須川さんの音の変化。
彼が叩くあたたかいドラムの音が、Jackson vibeの鼓動だ。
そして新曲の『バスに飛び乗れ』。
リフが気持ちいい。ライブのために作られたような曲だ。
いや、彼らの楽曲でライブ栄えしないものなんてみつかりゃしないけれど。
ここからラストに向けてもういちどスパートをかけるように
『朝焼けの旅路』、そして『ミルキー』。
『ミルキー』は別にBPMがそんなに速いわけじゃないけど
ライブ全編を通している疾走感を少しも損なわない。
これは、今回のセットリストすべての曲にいえることだけど
歩いたり、立ち止まったりしたような記憶がない。
本当に2時間走りきった気がするのだ。
橋谷さんのギターがうなる『愛のうた』。
いつもいつも丁寧に音を放つイメージがあったのでこんなに彼が暴れるとは思わなかった。
今日のライブの橋谷さんは、何もかもを出し切ってしまうような潔さがあった。
そしてデビュー曲、『虹色の影』。
窪田くんが入った分、音色が増えて。
ベースラインがとても歌ってるなあと、すごくベースが映えてるなあとずっと思っていたのだけど。
��Dよりもこんなに厚くて激しい音を、ライブでしかもずっと奏で続けるというのは
このバンドの地力がどんだけすごいのかってことを思い知らせてくれる。
そして、『Walk down a bridge 』で本編は終了。
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気づいたら終わってました、というくらい短く感じられたライブ。
もう少し、もう少しだけでも、と祈るように手を叩く。
『ジャンボ!ジャンボ!』とツアータイトルをアンコールに
笑顔で彼等が出てきてやってくれた曲が、まだタイトルもついていない新曲だった。
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彼らのライブはいつだってとても気持ちよくて。
飛んで跳ねて笑って、ああ、いいライブだったねって。
そうやってみんな笑顔になって帰っていく。
今日だってそうだ。
だけど、だけど。
この曲は少し違った。
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彼等の楽曲の中では、初めてじゃないだろうか。
『モラトリアム』を歌った曲。
切なさを喚起するメロディーライン。
グローバーさんの高校時代のことを歌った曲だというこの曲で聞き取れた歌詞は
「朝なんて来なくていい」「春なんて来なくていい」
そんな、変わることを、過ぎ行くものを、恐れる言葉たち。
この切なさは、ノスタルジアだ。
痛くて痛くてたまらないのは、誰もが通り過ぎてきたものを
改めて目の前に真っ直ぐに突きつけてきたから。
息をすることさえ忘れてこの曲に飲み込まれた。
とにかく痛くて、でも上手く涙が出なかった。
それでも、この曲は決して失望のモラトリアムなんかじゃない。
「君に会えてよかった」「春は巡る」
前を向いているから故の痛みだ。すべてわかってるから。
変わらないでいることなんてできないと思っているから。
だから、こんなに疾走感溢れる曲なのだ。
心が逸る。苦しくて痛くて、それでも前を見据え続ける強さを。
そんな想いを歌うグローバーさんの声は、すべての迷いを撃ち殺すような強く、潔い声で。
胸を鷲掴んで離してくれない。


アコースティックギターに持ち替えて、ザ・タイマーズの名曲を。
『デイ・ドリーム・ビリーヴァー』だ。
Jackson vibeが奏でるこの曲は、オリジナルよりも力強い。
悲しいだけの歌にならない。そしてそこに救われる。
ラスト、バンドヴァージョンにアレンジされた『おやすみ』でライブは幕を閉じた。
家に帰って眠りにつくまで、泣き出したい気持ちにずっと駆られていた。



本当に凄いライブを観たと思った。
元々地力のあるバンドだと思っていたけれど。出来不出来の振り幅も小さいけれど。
だけど、今年見た全てのライブの中でも突出してた。
息をするのさえ忘れて、苦しさに気づいて息を吸った。
そんな瞬間が幾度もあった。
圧倒されるというのは、こういうことをいうのだと思った。
嫌でも笑顔になって、飛んで跳ねてそして少しだけ泣く。
昨日の客の誰もがきっと心に忠実だった。
ダイレクトな反応というものをしていた。そして誰もが幸せになった。
心の奥まで暖められて、熱はきっと未だ残ってることだろう。
新曲に名前がつくのを楽しみに待つ。
彼等の次のアルバムを待ち遠しく思う。
Jackson vibeの次が、未来が。本当に楽しみで仕方ない。



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